島医者の離島日記 〜"あの先生"であったこと〜

島医者の経験をもとに都市部の医療と比較

〜第1章〜 2020.6 -最期まで南大東に居たい- その2

前回は、南大東島に赴任後、初めてのお看取りをすることになったおばぁについて話をしました。今回はその続編です。※個人情報保護の観点から症例の詳細は改変してあります。 長男と面会を果たせた翌日。外来診療が終わった後の夕方、往診を行いました。おば…

〜第1章〜 2020.6 -最期まで南大東に居たい- その1

前回は離島の生活におけるネットショッピングについて話をさせていただきました。今回は、赴任して初めて、最期までお看取りをさせていただいた方について、話をしていきたいと思います。※個人情報保護の観点から症例の詳細は改変してあります。 101歳女性(…

〜第1章〜 2020.6 -離島のネットショッピング-

前回までは、心肺蘇生後搬送できずに一晩を乗り切った事例について話しました。今回は離島でのネットショッピングに関してをお話ししたいと思います。 以前の記事(〜第1章〜 2020.3 -島民になるということ- - 島医者の離島日記 〜"あの先生"であったこと〜)…

〜第1章〜 2020.5 -島医者は甘くない- その2

前回は心肺停止した女性の蘇生に成功したものの、再度天候不良のため自衛隊が迎えに来れない時の話をしました。果たして迎えが無事に来れたのか、その続きの話をしたいと思います。※個人情報の観点から症例の詳細は改良してあります。 19時、搬送担当医師よ…

〜第1章〜 2020.5 -島医者は甘くない- その1

前回は離島と都市部の救急搬送の違いについてを話しました。今回は、前回のケース(〜第1章〜 2020.5 -離島の洗礼- その1 - 島医者の離島日記 〜"あの先生"であったこと〜を参照)の2日後にあった出来事について話をしていきたいと思います。※個人情報の観点か…

column -離島と都市部の救急搬送-

前回まで2回に渡り、急変した患者を天候不良で搬送できない事例についてお話しました。今回はcolumnとして離島と都市部での救急搬送の違いについて話をしたいと思います。 最善ではなく、乗り越える医療 離島はとにかく資源がありません。前回の事例のように…

〜第1章〜 2020.5 -離島の洗礼- その2

前回では、意識障害とショック状態の患者を搬送しようと試みるも、南大東島周囲の濃霧により自衛隊が来ることが出来ず、絶望の淵に立たされていました。今回は、その後の話をしていきたいと思います。※個人情報保護の観点から症例の詳細は改変してあります。…

〜第1章〜 2020.5 -離島の洗礼- その1

前回は、大変な中でも嬉しい贈り物に励まされながら頑張っているお話をしました。今回は急患が発生した際に受けた離島の洗礼についてお話をします。※個人情報保護の観点から症例の詳細は改変してあります。 夏の暑さを感じ始める5月、南大東では濃霧が発生す…

〜第1章〜 2020.5 -嬉しい贈り物-

前回は、赴任後初めてのGWを通して、休日の過ごし方について話をしました。今回は、5月の初めに届いた"嬉しい贈り物"の話をします。 南大東島の流通 南大東島の流通は飛行機(1日2便)か船(週1回)であり、基本的には船で荷物が運ばれてきます。住んでいた感覚…

〜第1章〜 2020.5 -初めてのGW-

前回は誕生日に良くないことが起こるジンクスのお話をしました。今回からは5月に入り、赴任後初めてのゴールデンウィーク(GW)についてお話しします。 休みだけど休めない 南大東診療所は基本的に土、日、祝日が休みで通常診療は行っていません。しかし、島に…

〜第1章〜 2020.4 -僕の誕生日に起きた出来事-

前回は離島における妊婦健診についてお話ししました。今回は真面目な内容ではないので気軽に読んでください。 嬉しくない誕生日 赴任してから約1ヶ月が過ぎた頃、私の誕生日がやってきました。私は"誕生日によくないことが起きる"というジンクスがあります …

〜第1章〜 2020.4 -未知のウイルスとの闘い- 不安を抱えながらの妊婦健診

前回は消防団との連携についての話をしました。今回は新型コロナ感染を恐れ、妊婦健診があるけど本島へいきたくない!という妊婦さん達にどのように対応していったかを話したいと思います。 南大東島の妊婦さん 南大東島には通年、妊婦さんが10名前後います…

〜第1章〜 2020.4 -未知のウイルスとの闘い- 消防団との連携

前回は診療所における新型コロナ対策の話をしました。今回は消防団との連携についてですが、まず、"消防団"という言葉を知らない方もいると思うので、説明をしていきたいと思います。 消防団とは 消防団は「市町村に設置される非常備の消防機関」のことを指…

〜第1章〜 2020.4 -未知のウイルスとの闘い- 離島診療所でのコロナ対策

前回は日記から外れて私がなぜ家庭医を目指し、沖縄へ渡ったか、について書きました。今回からまた日記に戻りたいと思います。 2020.4.3、さっそく村長にコロナ対策本部の会議に呼ばれ、医師としての意見を求められました。感染症の専門知識も豊富ではなく、…

〜第1章〜 column -沖縄へ渡った理由-

今回は日記から離れて、僕がなぜ家庭医を目指し、なぜ沖縄に辿り着いたかを話していきたいと思います。 私の両親は共働きで幼少期は祖母にとてもお世話になりました。祖母は健康でしたが、色々と不調の訴えが多く、どの病院にいっても『問題ない』といわれ、…

〜第1章〜 2020.4 -初めての急患搬送- その4

ここまで、「初めて急患搬送となったAさん」を①、②という視点でお話ししてきました。最後に「③患者の訴えは"背景"を踏まえて解釈する」をお話します。 搬送するかを判断するとき、"病歴や身体診察"を大事にしています(①参照)が、患者の"背景"に注目しなけれ…

〜第1章〜 2020.4 -初めての急患搬送- その3

前回は「①設備が限られた中で"判断"をしないといけない」をお話ししました。 「②搬送する"基準"をどう考えるか」という視点で考えていきたいと思います。 私の中では"基準"を以下の3つで考えています。 1.緊急性と必要性 2.交通手段の問題 3.環境の問題 マ…

〜第1章〜 2020.4 -初めての急患搬送- その2

今回は、前回お話したAさん(頭痛の高齢女性)を通して離島医療について考えていきたいと思います。①、②、③の視点でお話をします。(〜第1章〜 2020.4 -初めての急患搬送- その1 参照) 「①設備が限られた中で"判断"をしないといけない」 まず、医学的診断は、病…

〜第1章〜 2020.4 -初めての急患搬送- その1

前回は"島民"になって感じた苦労についてお話ししました。 今回は南大東島に赴任して初めての急患搬送のことをお話しします。 ※個人情報保護の観点から症例の詳細は改変してあります。 うららかな春のある日。初めての急患搬送がありました。高齢女性のAさん…

〜第1章〜 2020.3 -島民になるということ-

前回は赴任して"島医者"として直面した苦悩について話をしました。 今回は"島民"として苦悩した離島ならではの話をしたいと思います。 南大東島をはじめ、ほとんどの離島では食料は本島から輸送して仕入れを行なっています。 基本的に食料の輸送は"船"で行な…

〜第1章〜 2020.3 -島医者になるということ-

前回はなぜ私が南大東島を選んだかについて話をさせていただきました。 今回からは時系列で、第1章を島医者1年目、第2章を2年目として書いて行きたいと思います。 また、現在私が働いている都市部診療所との比較も間に織り交ぜていく予定です。 2020.3.26、…

〜序章〜 -この島を選んだ理由-

前回までで"南大東島"について簡単に紹介してきました。 今回は沖縄県の数ある離島の中からなぜ、私がなぜ"南大東島を選んだのか"をお話ししていきたいと思います。 私は沖縄県立病院郡に所属していたため、沖縄県管轄である16個の離島から選ぶことができま…

〜序章〜 -南大東島 その2-

前回は南大東島の立地、文化についてお話ししました。今回は産業や住民について話していきたいと思います。沖縄といえば"サトウキビ"南大東島もサトウキビは中心となる産業です。大きな製糖工場があり、時期(製糖期)になると24時間工場が動き続け、他県から…

〜序章〜 南大東島 その1

今回は『南大東島』について話そうと思いましたが、、、 色々まとめていたところ、『南大東島』というテーマだけで数ヶ月のブログを書けてしまいそうなくらいの量になってしまったので、今回は大枠をお話しして、私が経験した話と交えながら少しずつ深めてい…

自己紹介とビジョン

初めまして。 医師7年目 総合診療専門医、家庭医療専門医の菊池 徹哉と申します。 まずは自己紹介。 私は東京出身、沖縄県で研修を行い、医師5年目から沖縄県南大東島(人口約1300人)という離島の診療所で2年間働いていました。 現在は東京に戻ってきて、都市…