島医者の離島日記 〜"あの先生"であったこと〜

島医者の経験をもとに家庭医療学を広めたい

〜第1章〜 2020.4 -未知のウイルスとの闘い- 消防団との連携

前回は診療所における新型コロナ対策の話をしました。今回は消防団との連携についてですが、まず、"消防団"という言葉を知らない方もいると思うので、説明をしていきたいと思います。 

消防団とは

消防団は「市町村に設置される非常備の消防機関」のことを指します。南大東村の場合、団員のほとんどが役場職員で、本業と兼務で活躍してくださっています。業務内容は、患者搬送(救急車の運転)、時間外診療の付き添い(家族などが付き添えない場合)、急患で診療所の人員が足りない場合の応援、などです。離島では人員不足のため、診療所の医師と看護師ではどうにもならない時があり、いつも消防団の皆さんが助けてくださっていました。消防団員は基本的に役場職員のため、救急隊のように医学的知識を学校などで勉強してきていません。しかし、南大東では歴代の医師と密に連携していたため、知識も豊富でとても力強い存在でした。そこで、この未知のウイルスとの闘いにも消防団の協力は不可欠でした。

"夕日の広場"からの景色

2020.4.7、消防団長からの依頼もあり、消防団の新型コロナへの知識を深めるために講義を行い、防護服の脱着の仕方などを教えることとなりました。

安全の確保

感染患者の対応をしてもらうには消防団の安全は絶対に確保しないと行けません。新型コロナの基本的な知識、感染者へ接触する時の注意点などを中心に説明させてもらいました。しかし、特に防護服の脱着は、当時、医療者でも混乱していた状況であり、1回の講義では伝えることが難しく、後日、仕事おわりに何班かに別れ、診療所まで勉強をしてもらうことになりました。

この時は、消防団が所持している"化学防護服"で指導をしました。

このように診療所医師と消防団でコミュニケーションをとりながら、いざという時に備え、訓練をしていました。南大東島の消防団はとても積極的で、このあとも勉強会を続け、窮地を何度も助けてもらうこととなります。

次回は、新型コロナへの恐怖によって、島内の妊婦さんたちが本島での妊婦健診に行けない事態が発生しました。この事態をどう乗り越えたかについて書いていきたいと思います。